滋賀県の中心に内海のように広がる琵琶湖は、日本最大の淡水湖であり、世界でも最も古い湖のひとつです。その南岸に位置する大津市は、かつて都が置かれ、巡礼の拠点として、また夏の避暑地として千年以上の歴史を刻んできました。8月になると街は日本屈指の花火大会の舞台へと変わり、周囲の山々や古刹は蒸し暑い平地からの涼やかな逃避先となります。京都駅からわずか10分という立地は、関西エリアで最も手軽で実りある夏の日帰り旅——あるいは一泊旅行——を約束してくれます。
琵琶湖大花火大会
大津の夏の最大イベントは、琵琶湖大花火大会です。約1万発の花火が鏡のような湖面の上空に打ち上げられ、光の一つひとつが水面に映り込んで二重の輝きを生み出します。大会は例年8月上旬の金曜日の夜に開催され、スターマイン、ワイドスターマイン、大型創作花火が約1時間にわたって夜空を彩ります。大津港周辺やにおの浜の湖岸プロムナードには数十万人の観客が詰めかけます。
混雑を避けつつ良い眺めを確保するなら、膳所城跡公園の東側の芝生エリアや、琵琶湖大橋へのアプローチ沿いがおすすめ。昼過ぎに到着すれば快適な場所を確保できますが、JR大津駅や京阪浜大津駅周辺は日没前には人で埋まります。湖畔のホテルのバルコニーから鑑賞する地元の方も多く、数か月前から予約が殺到します。
山上の古刹を巡る
大津の寺院群は、隣の京都にも引けを取らない歴史と格式を誇ります。三井寺(正式名称:園城寺)は天台宗の大本山のひとつで、7世紀に創建されました。森に包まれた山腹に広がる境内からは琵琶湖を一望でき、その梵鐘「三井の晩鐘」は近江八景のひとつとして和歌や絵画に詠まれてきました。夏の朝、蝉しぐれの中を杉木立の光と影を縫って歩く境内は、静かな瞑想の時間を与えてくれます。
さらに高い場所へ。坂本からケーブルカーで登る比叡山延暦寺は、1,200年以上にわたり日本仏教の根本道場として機能してきた一大伽藍群です。最澄が788年に開創し、浄土宗、禅宗、日蓮宗など主要宗派の開祖がここで学びました。夏の山頂は平地より数度涼しく、古い杉の森が伽藍を取り囲む風景は数百年前にタイムスリップしたかのよう。山頂からの眺望は、北に琵琶湖の全景、西に京都盆地を一望する大パノラマです。
湖の上で、湖のそばで
8月の暑さをしのぐなら、琵琶湖そのものが最大のアトラクションです。アメリカの大湖を走る外輪船をモデルにしたクルーズ船「ミシガン」が大津港から出航し、ランチクルーズやサンセットディナークルーズを運航しています。アッパーデッキではライブ演奏も楽しめます。もう少しアクティブに過ごしたいなら、西岸の近江舞子ビーチ周辺でカヤックやSUP(スタンドアップパドルボード)のレンタルが利用可能。砂浜と松林が地中海のような雰囲気を醸し出しています。
サイクリストには、琵琶湖を一周する約200kmの「ビワイチ」コースが人気です。大津から守山を経由する南湖一周は約60kmで、平坦な地形と常に見える湖の景色が魅力の日帰りコース。JR大津駅近くのレンタサイクルステーションを利用すれば、涼しい早朝に出発して午後の暑さの前に戻ることができます。
地元の味を楽しむ
滋賀は日本三大和牛のひとつ、近江牛の本場です。その歴史は400年以上に遡り、日本最古のブランド牛ともいわれています。大津には近江牛の焼肉やすき焼きの名店が揃い、大阪の神戸ビーフ店に比べてかなり手頃な価格で極上の霜降り肉を味わえます。
琵琶湖の淡水魚も地元の食卓の主役です。ビワマスは湖の固有種で、刺身や塩焼き、あるいはなれずしとして供されます。なれずしは日本最古の食文化のひとつで、発酵による独特の酸味が特徴です。炭火で丸ごと焼いた鮎は夏の風物詩。食事には滋賀の地酒を合わせてみてください。湖盆の柔らかな水で醸されたクリーンでエレガントな酒が、淡水魚の繊細な味わいと見事に調和します。
アクセスと旅のヒント
京都駅からJR琵琶湖線で大津駅まで約9分。大阪からはJR新快速で約40分。京阪電車なら京都市内の三条・四条から浜大津まで約20分で、湖畔のすぐそばに到着します。
花火大会当日の帰りの電車は大変混雑し、臨時便が深夜まで運行されます。大津で一泊するか、北へ15分ほどの雄琴温泉に泊まるのがおすすめ。花火のあと、月明かりの琵琶湖を眺めながら露天風呂に浸かる——これ以上ない夏の夜の締めくくりです。
日中の観光には日焼け止めと帽子を忘れずに。真夏の湖面は強い光を反射します。寺院巡りは涼しい早朝がベスト。延暦寺へのケーブルカーは頻繁に運行されていますが、最終便の時刻を確認して山上で取り残されないようご注意ください。
Image: Otsu at the south end of Lake Biwa in Shiga prefecture, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons