箱根といえば温泉、芦ノ湖の鳥居、富士山の眺望。しかし5月下旬がベストシーズンだと知る人は少ない。ゴールデンウィークの混雑は去り、夏の湿気はまだ来ず、山々は「新緑」と呼ばれる目の覚めるような緑に包まれる。今年はもうひとつ訪れる理由がある。箱根湿生花園が開園50周年を迎え、特別プログラムや展示を開催するのだ。
湿生花園、50年目の春
標高650mの仙石原高原にたたずむ箱根湿生花園は、日本有数の湿地植物コレクションを誇る。1976年の開園以来、かつて箱根カルデラに広がっていた湿原の生態系を守り続けてきた。
5月下旬は最も美しい季節のひとつ。花菖蒲が咲き始め、睡蓮が池に花を開き、高山の野草がボードウォーク沿いを彩る。50周年記念として、専属植物学者によるガイドウォーク、花園の歴史を振り返る回顧展、通常非公開の研究エリアの特別開放が予定されている。
この花園の魅力は親密さにある。箱根のメジャースポットと違い、ここは静かな思索の場だ。木道が湿原と草地を縫い、湿った土と野草の香りが漂い、聞こえるのは鳥のさえずりと葦のそよぎだけ。ゆっくり歩き、じっくり見ることで報われる場所だ。
実用情報:
- 入園料:約700円
- 9:00〜17:00(最終入園16:30)
- 仙石原に位置。箱根登山バスで箱根湯本または強羅からアクセス
ポーラ美術館:森のギャラリー
湿生花園から車(またはバス)で約15分、ポーラ美術館は標高750mのブナ林に埋もれるように建っている。建物自体が傑作で、大部分が地下にありガラスの壁が森を内部に取り込む。コレクションは印象派から現代日本美術まで、モネ、ルノワール、ピカソ、藤田嗣治の作品が並ぶ。
5月下旬にはSPRINGの展覧会トークが開催される。しかし特別展がなくても建物だけで訪れる価値がある。駐車場から入口までのブナと紅葉の森の散策路は、箱根で最も美しいショートトレイルのひとつだ。
実用情報:
- 入館料:1,800円
- 9:00〜17:00(最終入館16:30)、水曜休館
- 森を望むテラスのカフェで上質なコーヒーと軽食を
温泉の要素
箱根旅行に温泉は欠かせない。5月下旬はGWや夏の週末より明らかに空いていて最適だ。おすすめをいくつか。
- 天山湯治郷: 箱根湯本近く、渓谷の森の中に広がる露天風呂群。自然の岩を活かした浴槽が複数あり、素朴で深いリラクゼーション。日帰り約1,300円〜。
- 箱根湯寮: 貸切露天風呂もあるモダンな施設。プライバシー重視の旅行者に最適。箱根湯本駅近く。
- 仙石原の温泉旅館: 湿生花園に近い仙石原エリアに泊まるなら、山々を望む白濁硫黄泉の小さな旅館が数軒ある。
箱根一日モデルプラン
- 午前(9:00〜11:30): 箱根湿生花園からスタート。湿原をゆっくり散策し、ガイドツアーがあれば参加。
- 昼食(11:30〜12:30): 仙石原でそばを。箱根の山水が作るそばは格別。
- 午後(13:00〜15:30): バスか車でポーラ美術館へ。コレクションと森の散策で2時間は確保したい。
- 夕方(16:00〜18:00): 箱根湯本に下りて天山湯治郷か箱根湯寮で温泉。
- 夜: 宿泊なら旅館へ。東京に戻るなら箱根登山鉄道で小田原へ、新幹線で35分。
箱根へのアクセス
- 東京(新宿)から: 小田急ロマンスカーで箱根湯本へ(約85分、2,330円)。最も快適で景色が良い選択肢。
- 東京駅から: 新幹線で小田原(35分)、箱根登山鉄道で箱根湯本(15分)。
- 箱根フリーパス: バスを多用するなら、新宿から箱根フリーパス(2日間約6,100円)が箱根内のほとんどの交通をカバーし、多くの施設で割引もある。
箱根はいつ訪れても美しいが、5月下旬は特別な瞬間を捉えることができる。混雑と暑さの間、新緑に包まれ、花が開き、山の温泉から湯気が立ちのぼる。湿生花園の50周年が、いま訪れる理由を与えてくれる。あとは山が応えてくれるだろう。
Image: Hakone Botanical Garden of Wetlands, CC BY-SA 3.0, by 663highland, via Wikimedia Commons