毎年8月上旬、日本列島の北を走る東北地方が一年で最も熱く燃え上がる一週間がやってくる。東北三大まつり——青森ねぶた祭・秋田竿燈まつり・仙台七夕まつり——は、わずか7日間のあいだに3つの県庁所在地を舞台に繰り広げられる、日本最大級の祭りリレーだ。巨大な武者灯籠が夜を焦がす青森、竹竿に吊された提灯が稲穂のように揺れる秋田、そして商店街を覆い尽くす七夕飾りが風にそよぐ仙台——それぞれまったく異なる表情を持つ3つの祭りを、新幹線でつないで一気に体験できる。
青森ねぶた祭(8月2日〜7日)
「ラッセラー、ラッセラー!」——跳人(はねと)たちの掛け声と太鼓の地響きが街を震わせる。青森ねぶた祭の主役は、高さ5メートル、幅9メートルに達する巨大な人形灯籠「ねぶた」。歌舞伎や神話の一場面を和紙と針金で立体的に造形し、内部に数百個の電球を灯す。暗闇に浮かび上がるその迫力は、写真や映像では到底伝わらない。
ねぶた祭の最大の魅力は「参加型」であること。正装(はねと衣装)を身につければ、誰でも踊りの列に加われる。衣装は青森市内のレンタル店で一式3,000〜4,000円程度で借りられる。ビールを片手に飛び跳ねながら街を練り歩く体験は、見るだけの祭りとはまったく別の感動がある。
運行コースは青森駅前から約2km。毎晩19時10分頃にスタートし、21時頃まで続く。最終日の8月7日は昼運行の後、受賞ねぶたを船に載せて青森港を巡る「海上運行」と花火大会で幕を閉じる。
アクセス: 東京から東北新幹線で新青森駅まで約3時間半。新青森から青森駅へはJR奥羽本線で6分。
秋田竿燈まつり(8月3日〜6日)
「どっこいしょー、どっこいしょ!」——竿燈まつりは、技と度胸の祭りだ。長さ12メートル、重さ50キロの竹竿に46個の提灯を吊り下げた竿燈を、差し手と呼ばれる演者がたった一人で支える。掌に載せる「手のひら」、額に載せる「額」、腰に載せる「腰」——風で大きく揺れる竿燈を絶妙なバランスで操る姿は、息をのむ美しさだ。
会場は秋田駅前の竿燈大通り、18時50分に280本以上の竿燈が一斉に灯ると、通りは黄金色の光の川に変わる。提灯が夜風に揺れるさまは、たわわに実った稲穂そのもの——竿燈まつりはもともと五穀豊穣を祈る行事なのだ。
日中は千秋公園で「妙技会」(竿燈コンクール)が開催される。差し手たちの本気の技を間近で見られるほか、体験コーナーでは小型の竿燈を実際に持ち上げることができる。一度持てば、本番の12メートルがいかに超人的かがよくわかる。
アクセス: 東京から秋田新幹線「こまち」で約4時間。秋田駅から会場まで徒歩5分。
仙台七夕まつり(8月6日〜8日)
青森と秋田が「動」の祭りなら、仙台七夕は「静」の祭りだ。全長数百メートルのアーケード商店街に、3,000本以上の七夕飾りが天井から垂れ下がる。吹き流し、短冊、折り鶴、紙衣——伝統的な七つ飾りは、それぞれ願い事の意味を持つ。地元の商店や企業が数か月かけて手作りした飾りは、一本一本がまったく異なるデザインで、歩くごとに新しい世界が目に飛び込んでくる。
和紙の飾りが風に揺れてさらさらと音を立てる中を歩くのは、日本の夏の原風景とも言える体験。一番町通りと中央通りがメイン会場だが、周辺の小さな商店街にも個性的な飾りが並び、穴場スポットとして地元の人にも愛されている。
グルメは仙台名物の牛タンが外せない。厚切りの炭火焼き牛タンに麦飯とテールスープのセットは、祭り歩きの後に染みる味わい。ずんだ餅(枝豆の餡で包んだ餅)も仙台ならではのスイーツだ。
前夜祭の8月5日には広瀬川河畔で約16,000発の花火が打ち上がる「仙台七夕花火祭」が開催され、翌日からの本祭への期待を一気に高める。
アクセス: 東京から東北新幹線「はやぶさ」で約1時間半。3都市で最もアクセスが良い。
三都市を巡るモデルコース
日程が絶妙にずれているおかげで、3つの祭りを一筆書きで回れる。おすすめルートは、青森(8月2〜4日)→秋田(8月4〜6日)→仙台(8月6〜8日)→東京。
おトクなきっぷ: 「JR東日本パス(東北エリア)」(5日間連続20,000円)で新幹線・在来線が乗り放題。3都市間の移動をすべてカバーできる。
宿泊の注意点: 祭り期間中の市内ホテルは半年前から埋まり始める。直前に探すなら、弘前(青森の代替)、大仙(秋田の代替)、松島(仙台の代替)など近隣都市も選択肢に入れよう。
持ち物: 東北の8月は南日本ほど蒸し暑くないが、それでも連日の徒歩観覧は体力を消耗する。歩きやすい靴、小さめのタオル、水分補給用のボトルを忘れずに。
祭りの先にある東北
各都市は祭り以外にも見どころが豊富だ。青森では「ねぶたの家 ワ・ラッセ」で本物のねぶたを間近に見学でき、制作工程も学べる。秋田の千秋公園は市街を一望でき、秋田県立美術館には藤田嗣治の大壁画がある。仙台では伊達政宗ゆかりの瑞鳳殿や大崎八幡宮が、独眼竜の時代へと誘ってくれる。
8月第一週の東北は、日本のどこにもない祭りの密度と多様性を誇る。新幹線でつなぐ1週間の旅は、夏の日本を最も濃密に味わえるゴールデンルートだ。
Image: 青森ねぶた祭の山車, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons