三浦半島の最南端、東京都心からわずか90分。三崎漁港に降り立つと、まるで別世界に迷い込んだような気分になります。頭上をカモメが舞い、漁船が朝の水揚げを運び込み、年季の入った商店街にはあらゆる形のマグロ料理が並ぶ——そして短い橋を渡れば、太平洋に向かって切り立つ城ヶ島の断崖が待っています。4月中旬にはMISAKIぐるぐる春まつりが開催され、三崎下町商店街が屋台、ライブ、クラフトで賑わう週末に。東京近郊で最も過小評価されている海辺の街への、春の日帰り旅ガイドです。
マグロの聖地・三崎
三崎は江戸時代から日本有数のマグロ漁港として栄えてきました。遠洋漁業の船団はインド洋まで出漁し、三崎魚市場の朝のマグロ競りは豊洲市場よりも小規模ながら、臨場感は引けを取りません。競り自体は事前予約が必要ですが、周辺の市場通りは早朝から一般客に開放されています。
旅行者にとっての最大の楽しみはマグロ丼——艶やかなルビー色の刺身がご飯の上にたっぷりと盛られた一杯です。港周辺のレストラン街では、各店が鮮度を競い合っています。
- くろば亭: マグロのほほ肉ステーキやマグロ餃子など、創作マグロ料理で有名。週末は行列覚悟。
- 三崎館: 築100年以上の料亭旅館。上品なマグロ会席コースが楽しめます。
- まぐろハウス: バスターミナル近く、リーズナブルで気取らないマグロ丼が人気。
定番のマグロ丼以外にも、とろたく(大トロとたくあんの手巻き)、マグロカツ(衣をつけて揚げたマグロのカツレツ)、そして地元名物の三崎マグロラーメン——マグロの骨から取った濃厚スープのラーメンもお見逃しなく。
MISAKIぐるぐる春まつり
2026年4月18日〜19日、三崎下町商店街は毎年恒例のぐるぐる春まつりで活気に包まれます。「ぐるぐる」の名の通り、細い商店街をぐるぐると巡りながら、数十の屋台やクラフトブースを楽しむスタイルです。
このお祭りの魅力は、その草の根的な雰囲気。地元の漁師がその場で鮮魚を焼き、近隣の農家が三浦大根や春野菜を持ち寄ります。地元バンドのライブ、子ども向けイベント、商店街の隠れた名所を巡るスタンプラリーもあり、小規模ながら一日中楽しめるイベントです。
混雑を避けるなら午前中のうちに到着を。ランチタイムの混み合いを回避しつつ、ゆっくり散策する時間も確保できます。
城ヶ島
城ヶ島大橋で本土とつながる城ヶ島は、ダイナミックな海岸風景が広がるコンパクトな島。島の外周は約2時間で歩け、関東屈指の断崖絶景が楽しめる遊歩道が整備されています。
島一周の主な見どころ:
- 馬の背洞門: 太平洋の波が何世紀もかけて削り出した天然の海食洞門。城ヶ島で最も有名なフォトスポットです。急な小道を下れば、岩場から間近に見ることができます。
- 城ヶ島灯台: 1870年にフランス人技師ヴェルニーによって建設された、日本最古級の洋式灯台。周辺公園からは房総半島まで見渡せ、条件が良ければ西に富士山も望めます。
- 北原白秋記念館: 大正時代の詩人・北原白秋はかつて城ヶ島に住み、名詩を数多く残しました。小さな記念館は静かで瞑想的なひとときを与えてくれます。
- 磯の潮だまり: 島の南岸には火山岩の岩場と、春になると海の生き物で賑わう潮だまりが点在しています。
4月中旬の島の遊歩道は、菜の花や浜菊などの野花が咲き乱れ、黄色い花と青い海、緑の岬のコントラストが見事です。
三浦半島のその他の見どころ
一日たっぷり使えるなら、半島はまだまだ魅力を秘めています。
三浦海岸: 半島西側に位置する長い砂浜で、相模湾越しに富士山を望むビーチ。春はまだ人が少なく、夏のビーチシーズン前の静かな散歩に最適です。
三浦の野菜直売所: 三浦半島は三浦大根、春キャベツ、スイカ(夏)の名産地。道沿いの直売所では農家から直接購入でき、東京のスーパーよりずっとお得。4月は春キャベツと早出しトマトが旬です。
小網代の森と干潟: 半島東側の自然保護区。マングローブのような干潟、森の中の遊歩道、バードウォッチングスポットがあり、関東最後の手つかずの海岸湿地帯の一つです。
アクセス
東京(品川・横浜)から: 京急線で三崎口駅(京急線の最南端)へ。品川から快特で約70分。三崎口からは京急バスで三崎港まで約25分。
みさきまぐろきっぷ: 日帰り旅行の最強パス。品川からの場合約3,570円で以下がセット:
- 京急線三崎口までの往復乗車券
- 半島内バス一日乗り放題
- 提携30店舗以上から選べるマグロ料理1食
- レジャー施設チケット1枚(城ヶ島遊覧船、土産店割引、温泉入浴など)
食事だけで1,500〜2,000円相当なので、非常にお得です。京急各駅の券売機で購入可能。
車の場合: 横浜横須賀道路から国道134号で海沿いを南下。三崎港と城ヶ島に駐車場あり。祭りの週末は満車になりやすいので、午前10時前の到着を推奨。
おすすめ日帰りモデルコース
9:00 — 品川から京急快特に乗車(駅でまぐろきっぷを購入)
10:15 — 三崎口着 → バスで三崎港へ
10:45 — 朝の市場通りと下町商店街を散策。ぐるぐる春まつり期間(4/18-19)なら屋台巡り
12:00 — マグロランチ。まぐろきっぷの食事券を使って参加店で昼食
13:30 — 城ヶ島大橋を渡って島へ。海岸遊歩道を一周(90分〜2時間)
15:30 — 三崎に戻る。レジャー券を使って温泉でひと休みも◎
16:30 — お土産にマグロや地元のお菓子を購入
17:00 — バスで三崎口駅へ → 京急で東京方面へ
旅のヒント
- 平日 vs 週末: ぐるぐる春まつりは土日開催で港周辺は混雑します。祭りなしで静かにマグロを楽しみたいなら平日がおすすめ。
- 天候: 半島は海風が吹き付けるので、暖かい日でも薄手のジャケットを。雨天時の城ヶ島遊歩道は滑りやすいので、グリップの良い靴で。
- 鎌倉との組み合わせ: 三崎口と鎌倉は同じ京急・JR沿線。午前中に鎌倉を訪れ、午後から三崎でマグロと絶景を楽しむ組み合わせも可能です。
- 一泊する場合: 港近くの民宿では、獲れたての魚介を使った夕食と海が見える部屋を提供しています。一泊すれば、日帰り客が見逃す早朝の市場の活気を体験できます。
三崎と三浦半島は、新幹線に乗らなくても日本の漁港文化を肌で感じられる場所。マグロは世界クラス、景色は荒々しくも美しく、地元の祭りには大きな観光地にはない温かさがあります。潮風と新鮮な刺身の一日を求めて、半島の先端へ——。
画像: 城ヶ島からの眺望、三浦市、神奈川県、CC BY-SA 4.0、Wikimedia Commons