東京から気軽にアクセスできる温泉リゾート・箱根は、美術館の密度でも日本屈指の場所だ。そんな箱根が2026年の夏、とびきりのアートシーズンを迎える。6月17日にポーラ美術館で3つの大型展覧会が同時に開幕し、数日前には日本美術の金銀の輝きをテーマにした特別展も始まる。温泉と山の絶景、そしてアートを一度に楽しめる、今シーズン最高の週末旅プランを紹介しよう。
ポーラ美術館:3つの展覧会が同時スタート
標高750メートルのブナ林に囲まれたポーラ美術館は、印象派と近代美術の日本有数のコレクションで知られる。今年6月、意欲的な3つのプログラムが一斉に幕を開ける。
セザンヌ・レジェンド(2026年6月17日〜2027年4月7日)は目玉企画。近代絵画の父ポール・セザンヌの生涯と代表作を、絵画、素描、マルチメディア展示で包括的にたどる大回顧展だ。プロヴァンスの初期風景画から、絵画の歴史を変えた静物画や水浴図まで、セザンヌの芸術の全貌に迫る。
同時開催の**モネ没後100年・開館25周年記念「あたらしい目」**(2026年6月17日〜2027年4月7日)は、クロード・モネの没後100年を記念した展覧会。ポーラ美術館が所蔵するモネ作品と現代アーティストの作品を対話させ、モネの「見る力」が21世紀の美術にどう息づいているかを探る。単なる回顧展にとどまらない、新しいアプローチが光る。
3つ目は**コレクション・シネマ**(2026年6月17日〜2027年4月7日)。開館25周年を記念し、コレクションにまつわる映画を上映する特別プログラム。アートを映像で味わう、瞑想的な体験ができる。
ポイント: 3展すべて同じ会場・会期なので、1回の訪問でまとめて楽しめる。開館は9時。午前中の早い時間に行けば、混雑を避けてゆっくり鑑賞でき、隣接する「森の遊歩道」で屋外彫刻とブナ林の散策も楽しめる。
金銀雲母きら ―かがやきの日本美術―
箱根登山鉄道で数駅の宮ノ下・小涌谷エリアでは、特別展「金銀雲母きら」(2026年6月14日〜12月6日)が開催される。金箔、銀箔、雲母を用いてきらめく表面を生み出す日本独自の装飾技法「きら」に焦点を当てた展覧会だ。平安時代の雲母散らしの経典から、江戸時代の金屏風まで、日本の美術家たちが「光」そのものを表現媒体にしてきた歴史をたどる。工芸や素材文化に興味がある人には見逃せない展示だ。
箱根ミュージアム・トレイル
箱根のアートシーンは特別展だけにとどまらない。ミュージアム巡りだけで丸2日は過ごせる。
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箱根彫刻の森美術館 — 日本初の野外美術館。山並みを背景にした芝生の上に120点以上の彫刻が点在する。ピカソ館だけでも立ち寄る価値あり。初夏の緑と彫刻のコントラストは格別だ。
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岡田美術館 — 中国古代の陶磁器から琳派の名品まで、東洋美術の一大コレクション。庭園を望む足湯が、ギャラリー間の休憩に最高。
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成川美術館 — 芦ノ湖のほとりに佇む現代日本画専門の美術館。パノラマラウンジからは湖越しに富士山を一望でき、晴れた夏の朝の眺めは圧巻。
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江之浦測候所 — 箱根からやや足を延ばした相模湾の断崖に、アーティスト杉本博司が手がけた建築複合体がある。ガラスの舞台、石の円形劇場、光学硝子の構造物が海と空を切り取る。要予約。
アートの先へ:箱根の定番体験
箱根に来たなら、この土地を有名にした火山の景観と温泉も外せない。
**箱根ロープウェイに乗って大涌谷**へ。硫黄の噴気孔が立ち上る火山谷で名物の黒たまごを味わおう——食べると寿命が7年延びるという言い伝えがある。晴れた日には蒸気の向こうに富士山が姿を現す。
杉の巨木の参道を抜けて**箱根神社**へ。芦ノ湖に立つ朱塗りの鳥居は、箱根を代表する風景だ。
そして温泉。箱根温泉は、にぎやかな箱根湯本の旅館街から、山腹にひっそりと佇む宮ノ下の宿、高原の仙石原のロッジまで、数十の異なる泉質を持つ。一日中美術館を巡った後、山霧がたなびく露天風呂に浸かるひとときは、これ以上ない贅沢だ。
アクセス
新宿からは小田急ロマンスカーで箱根湯本まで約85分(全席指定)。箱根フリーパス(2日・3日間)を使えば、箱根登山鉄道、ケーブルカー、ロープウェイ、バス、芦ノ湖の海賊船がすべて乗り放題。美術館巡りに最適だ。東京駅からなら新幹線で小田原まで35分、そこから箱根登山線に乗り換えよう。
おすすめ時期: 6月下旬〜7月上旬の平日なら混雑が少なく、梅雨の深い緑も美しい。ポーラ美術館の展覧会は数カ月続くので急ぐ必要はないが、開幕直後の熱気は格別だ。
美術館を一日かけてじっくり巡るもよし、温泉と組み合わせて一泊二日の贅沢な旅にするもよし。2026年の夏、箱根はセザンヌのプロヴァンスからモネの睡蓮、何世紀にもわたる日本の金銀の輝きまで、日本でも屈指のアートシーズンを迎える。山の空気そのものが、金色に輝いて見えるはずだ。
Image: ポーラ美術館(箱根), CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons