8月最初の夜、秋田市の大通りが光の回廊に変わる。何百本もの竹竿にそれぞれ最大46個の提灯が吊るされ、蒸し暑い夏の夜空に揺れながらそびえ立つ。演者たちは——何ヶ月もの鍛錬を積んだ男女が——この揺れる竿燈を掌、額、肩、腰で操る。観衆の歓声と太鼓の轟きが夜に響き渡る。これが秋田竿燈まつり、国の重要無形民俗文化財に指定された、江戸時代から続く東北の夏の風物詩である。
隣の青森にはねぶたの山車があり、仙台には七夕の吹き流しがある。だが秋田の竿燈は、東北三大祭りの中でもっとも肉体的に過酷な芸能と言えるだろう。大型の竿燈は高さ12メートル、重さ約50キログラム——大人一人分に相当する。この重量物を片手で支え替え、あるいは鼻筋で受け止める妙技を目の当たりにすると、本当に息を呑む。
日程と会場
竿燈まつりは毎年8月3日から6日まで開催される。メイン会場は秋田市中心部、県庁前の竿燈大通り。夜本番は19時30分ごろから21時ごろまで。正式な演技終了後には体験コーナーがあり、来場者も小さめの竿燈を持ち上げてみることができる——その「ありえない重さ」を体感できる貴重な機会だ。
日中は千秋公園エリアで妙技会が行われ、個人の技を間近で見られる。
有料観覧席(約3,000円)は竿燈大通り沿いに設置されるが、早めの予約が必須。無料の立ち見エリアは通りの両側にあるが、良い場所を確保するには18時までに到着したい。
竿燈の歴史
竿燈の起源は「ねぶり流し」と呼ばれる七夕行事に遡る。夏の眠気や病気を払うための儀式で、米俵を模した提灯は豊作祈願の象徴だった。時代とともに竿は高く、提灯は増え、妙技は曲芸的に進化した。「竿燈」の名が正式に定まったのは1931年、国の文化財指定は1980年のことだ。
各竿燈は町内会が制作し、提灯に描かれる家紋や町のシンボル、季節の意匠は地域の誇りそのものである。
秋田へのアクセス
秋田市へは秋田新幹線「こまち」で東京から約4時間。奥羽山脈を越える車窓は絶景で、最後に広がる秋田平野の田んぼの風景は新幹線随一の美しさだ。
仙台からは高速バスで約3時間半、新幹線のおよそ半額。秋田空港からはリムジンバスで市内まで約25分、東京羽田(約70分)、大阪伊丹、札幌千歳への直行便がある。
竿燈大通りは秋田駅から西へ徒歩約15分。
乳頭温泉郷:日本最奥の秘湯
秋田市から北東へ約90分、田沢湖のほど近く、乳頭山の麓にある乳頭温泉郷は、日本でもっとも雰囲気のある温泉集落のひとつ。標高700〜800メートルのブナ林に7軒の一軒宿が点在し、すべて異なる泉質の自家源泉を持つ。「湯めぐり帖」(1,800円)を購入すれば7軒すべての湯に入れる。
最も有名な鶴の湯は350年以上の歴史を持ち、乳白色の硫黄泉と茅葺き屋根の建物が江戸時代そのままの風情を湛える。混浴の露天風呂は日本で最も写真に撮られる温泉風景のひとつだ(男女別の浴場もある)。
モダンな客室と上質な料理で知られる大釜温泉、鉄分を含む黒い湯が岩風呂を琥珀色に染める黒湯温泉、一部の建物に電気がなくランプの灯りで入浴する孫六温泉——それぞれに個性がある。
夏の乳頭温泉郷は深い緑に包まれ、下界の猛暑とは別世界だ。宿同士をつなぐ山道では高山植物やカモシカに出会えることもある。
田沢湖:日本一深い湖
乳頭温泉郷への途中にある田沢湖は、深さ423メートルと日本一。コバルトブルーの水の透明度は息を呑む美しさだ。西岸に立つ黄金のたつこ像——永遠の美を願い龍に姿を変えた伝説の娘——はフォトスポットとして有名。
夏は遊泳、カヤック、湖畔一周約20キロのサイクリングが楽しめる。秋田新幹線「田沢湖駅」からバスで約15分。
角館:みちのくの小京都
田沢湖駅から新幹線でわずか15分、武家屋敷通りで知られる角館。黒塀の屋敷が並ぶ通りをシダレザクラが覆い、夏は緑のトンネルとなる。春の桜に勝るとも劣らない美しさだ。
樺細工(かばざいく)は角館を代表する伝統工芸。山桜の皮を使った茶筒や小箱の制作実演を見学できる工房が複数ある。伝承館では角館の藩政時代の歴史を学べる。
秋田の食
きりたんぽ鍋 ——秋田を代表する郷土料理。炊きたてのご飯を潰して杉の串に巻きつけ、炭火で焼いた「きりたんぽ」を、比内地鶏のスープにセリ、ゴボウ、舞茸とともに煮込む。香ばしい焼き米と旨味たっぷりのスープの組み合わせは格別。
稲庭うどん ——日本三大うどんのひとつ。通常のうどんより細く、絹のようになめらか。夏は冷やしで、つけ汁と一緒にいただくのが定番。湯沢の佐藤養助本店が本家。
比内地鶏 ——秋田が誇る地鶏ブランド。しっかりした歯ごたえと濃厚な旨味が特徴。秋田駅前の居酒屋で焼き鳥として、あるいはきりたんぽ鍋の具として味わえる。
ハタハタ ——秋田の県魚。塩焼き、しょっつる(魚醤)鍋、ハタハタ寿司などで食べられる。しょっつるは東南アジアのナンプラーに似た発酵調味料で、鍋に深い味わいを加える。
ババヘラアイス ——秋田だけの路上スイーツ。伝統的な衣装の販売員がピンク(イチゴ味)と黄色(バナナ味)のアイスを花びらのように盛りつけてくれる。竿燈まつりの会場沿いにも出店する。
実用情報
- 8月上旬の秋田は暑いが(30〜33℃)、東京や大阪よりはかなり涼しい。夜は22〜24℃まで下がり、屋外での観覧に快適。
- 乳頭温泉郷は夏でも涼しく(日中20〜25℃)、薄手の上着があると安心。
- 竿燈期間中の秋田市内のホテルは非常に混む。少なくとも2ヶ月前に予約を。秋田駅周辺(ドーミーイン、メトロポリタン秋田、コンフォートホテル)が便利。
- 乳頭温泉の宿は早めの予約が必須。鶴の湯がもっとも取りにくく、大釜温泉や妙乃湯が比較的予約しやすい。
- モデルコースは3泊4日:8月2日秋田着→3〜4日竿燈→5日田沢湖駅へ移動、角館散策、乳頭温泉泊→6日湯めぐり後帰路。
- JR東日本パス(東北エリア)で秋田新幹線と在来線をカバーできる。
- 田沢湖・乳頭温泉エリアは田沢湖駅でレンタカーを借りると便利。林道は整備されているが道幅は狭い。
4日間のモデルコース
1日目:秋田市着。千秋公園と秋田県立美術館(藤田嗣治の大壁画)を見学。夜は竿燈まつり初日を観覧。
2日目:午前は千秋公園エリアの妙技会を見学。午後は秋田市内の商店街を散策、ババヘラアイスを堪能。夜は別の場所から竿燈2日目を観覧。
3日目:秋田新幹線で角館へ(約45分)。武家屋敷通り散策と樺細工工房を見学。田沢湖駅でバスに乗り換え、田沢湖を経て乳頭温泉郷へ。夜は宿の温泉と山の幸を堪能。
4日目:朝は湯めぐり帖で近隣の宿の温泉をはしご。午後は山歩きまたは田沢湖でカヤック。田沢湖駅から東京へ、あるいはさらに北へ。
秋田は声高に自己主張する街ではない。ゴールデンルートにはなく、世界的に有名な城もテーマパークもない。だが秋田が差し出すものは、もっと稀少だ——演者の技に息を呑む祭り、湯と風の音だけが聞こえる温泉、そして誰かに見せるためでなく自分たちのために育ててきた食文化。それが秋田の夏である。
Image: 2017年、二丁目橋付近での秋田竿燈まつり, CC BY-SA 4.0, 撮影:掬茶, Wikimedia Commons より