毎年秋、福島県会津若松の城下町は150年の時を遡ります。甲冑姿の武者、火縄銃隊、着物姿の姫君、そして地元の子どもたちの鼓笛隊が三日間にわたり街を練り歩く「会津まつり」。会津最大の年中行事であり、2026年は**9月19日(土)から21日(月・祝)**の開催。敬老の日の三連休と重なるため、東京からの小旅行に最適です。
忠義と悲劇から生まれた祭り
会津まつりが他の武者行列と一味違うのは、その背景にある歴史です。1868年の戊辰戦争で、会津藩は最後まで徳川幕府への忠義を貫きました。新政府軍による一か月に及ぶ籠城戦でも鶴ヶ城は落ちず、「難攻不落」の名を残します。この戦争が生んだのが白虎隊の悲話——飯盛山から城下の煙を見て落城と思い込み、自刃した少年武士たちの物語です。会津まつりは先人への感謝と鎮魂から始まった祭りであり、その精神は今もすべての行事に息づいています。
三日間の見どころ
9月19日(土):会津磐梯山踊り。 初日の夜は鶴ヶ城前で民謡「会津磐梯山」に合わせた輪踊り。老若男女が大きな輪になって踊り、観光客も飛び入り大歓迎です。ライトアップされた天守を背景にした踊りの輪は、東北でも屈指の風情があります。
9月20日(日):会津藩公行列。 祭りのハイライト。鶴ヶ城本丸での厳かな出陣式の後、騎馬の藩公、槍隊・鉄砲隊、白虎隊、薙刀を携えた娘子隊など総勢約500名の大行列が市内を一日かけて練り歩きます。午前は城内での出陣式、午後は神明通り周辺での観覧がおすすめ。火縄銃の一斉演武は大迫力——耳をふさぐ準備を。
9月21日(月・祝):会津新選組まつり・斎藤一忌。 会津は新選組と縁の深い土地。三番隊組長・斎藤一は戊辰戦争で会津のために戦い、この地に眠っています。最終日には墓前祭や剣技披露などの新選組関連行事が行われ、あわせて子どもたちの鼓笛隊パレードが街を彩り、祭りは賑やかに幕を閉じます。
赤瓦の名城・鶴ヶ城
三日間の中心となるのが鶴ヶ城。現在の天守は1965年の再建ですが、2011年に幕末当時の赤瓦が復元され、赤瓦の天守は全国でここだけ。内部は会津藩と戊辰戦争の資料館になっており、最上階からは磐梯山まで見渡せます。公園は入園無料。庭園内の茶室「麟閣」は千利休の子・少庵ゆかりと伝わり、抹茶と和菓子がいただけます。
足を延ばして:さざえ堂と飯盛山
半日は飯盛山へ。白虎隊士の墓の近くに建つのが、日本建築史上もっとも奇妙で美しい建物のひとつ会津さざえ堂です。1796年建立の六角三層のお堂で、内部は二重らせんのスロープ——上りと下りが決して交わらない一方通行構造は世界的にも珍しく、国の重要文化財に指定されています。市街中心部の七日町通りには明治・大正のレトロな商家が並び、会津漆器や赤べこの絵付け体験も楽しめます。
会津グルメ
会津は東北屈指の食と酒どころ。名物のソースカツ丼、曲げわっぱに山菜や鮭を載せて蒸したわっぱ飯、貝柱出汁の祝い椀こづゆは外せません。良質な米と水に恵まれた会津の日本酒は全国新酒鑑評会の常連で、七日町周辺には試飲できる酒蔵や酒販店が点在します。踊りの後の涼しい夜に地元の純米酒を一杯——これぞ会津の秋です。
アクセスと旅のヒント
東京からは東北新幹線で郡山まで約80分、JR磐越西線に乗り換えて会津若松まで約60〜75分。市内はレトロな周遊バス**「ハイカラさん」「あかべぇ」が駅・鶴ヶ城・飯盛山を結び、一日乗車券が便利です。三連休のため宿は早めの予約を。城から車で10分ほどの渓谷の温泉街東山温泉**に泊まれば、祭り見物の後に湯でひと休みできます。9月下旬の会津は日中は暖かく朝晩は冷えるので、羽織るものを一枚。もう一日あれば、酒とラーメンの町・喜多方へも列車ですぐです。
会津まつりは日本一派手な祭りではありません。しかし、土地と人と歴史がこれほど深く結びついた祭りは他にそうありません。赤瓦の天守の下を藩公行列が進む光景を目にすれば、会津の人々が今も「会津魂」を語り継ぐ理由がきっと分かるはずです。
Image: Tsuruga Castle, Aizuwakamatsu, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons